アルフラー邸
作品名の「アルフラー邸」は 建て主へ提案したこの住宅のテーマ「とある日本かぶれのフランス人芸術家が日本の民家に住みついてリノベーションした感じの家」の「とあるフランス人」を約したものです。郊外ののどかな立地にあって「田舎でくらす」というより「都市で暮らさない」という感覚を持った建て主に対し、周りに溶け込むのではなく、ゆらぐことのない個性を表現したような家を提案しようと考えました。そのとき思い浮かんだのがこのテーマです。
居心地の良さと個性を合わせもつたのしい家にしてほしいと依頼されました。諸条件としては、日当たりの良い母室を兼ねた家事室を設けること、猫にも居心地がいいこと、など何点か上がりました。デザインに関しては おまかせだったので時間を掛け建て主の人柄に合うものをとスケッチを重ねました。
土地探しからのお付き合いだったのですが、最初はたぶん事務所が近いから・・・くらいの感じではなかったでしょうか。土地がなかなか決まらなかったこともあり、家について考えを交換する機会はたくさん得ることが出来ました。私たちが手掛けた建物も見て体感してもらえました。
外観は目立たせず 小さな個人ギャラリーのようなたたずまいに。そして中に入るとタイムスリップしたかのような古びた下見板貼りの室内。そこで目に飛び込んでくるのは対照的なパープルの壁。ホールに立つと まるで舞台セットの中いるような感じが得られます。南の庭に面した家事スペースは6帖あり、バスルームとはガラスドアで仕切られ一体的な空間になっています。LDKが落ち着いた雰囲気の色合いなのに対し、サニタリーは白。日当たりが良く清潔な印象の空間です。
長いこと考えて相談しながら造った家です。建て主もいっしょに造ったという感じを受けているでしょう。「楽しい家になって良かった」と言っていただけました。
玄関ドアを開けると見える傘をかたちどった穴。スライドレールにより手前に傘を引き出して使えるようになっている。ちなみにこの穴、女性用も紳士用も子供用でも傘が通れるよう たくさん傘をリサーチして決定しています。
パープルの壁は左官仕上げを着色したものです。黒い壁は日本家屋の外壁で伝統的に使われる下見張りという工法です。
キッチンに隣接した食器庫。棚は造り付け家具で冷蔵庫などの家電も含め全てこのスペースに収納できる。
2階は寝室として使われる。廊下部分と建具で仕切れるようになっている。キッチンの上にあるブリッジ状のものは制作されたレンジフード兼ダクト。
中央に立つ洗面ユニット。化粧台の裏面はドレッサーになっている。
浴槽は床面とフラットで洗い場を2段下げている。浴室と洗面の間は強化ガラスで隔てている。
夕景:切り取った 壁から 内部をうかがう。外観は小さな個人ギャラリーといった イメージでつくっています。